ワンピースは言わずと知れた大人気漫画である。多くの人に支持されているが故に、もっと教育的側面が強くならないかと考えていることがある。あの世界観は、まさに大航海時代、バスコダガマが、コロンブスが、ベスプッチが、マゼランが、夢とお金を求めて地図無き所に向かって出航していった時代そのものだ。その時代と照らし合わせて、その歴史や、社会で発生する問題などをマンガ内に取り込めないか考えてみた。
■商売について
ワンピースをすべて見ていないので違っていたら申し訳ないが、島から島へと移動するのであれば、それぞれの産地の名産を仕入れて、新しい島に売りに行く、それで商売をすることでお金を稼ぎやすい。それぞれの地域でしか取れないものがあり、インドネシア当たりにあるスパイス諸島でスパイスを求めて多くの国が殺到した様に、マンガの設定上でも多くの特産品を設定し動かすことも可能だ。マンガで経済のエッセンスも入る、なんて素晴らしいんだろう。
■国の野望が無い
大航海時代で目立ったのは、儲けるために新しい国と交易したい、アメリカ大陸やアフリカで占領領域を増やしたいという国である。その時代の話をモチーフにしているのであれば、ポルトガルとスペインが世界を2分しようとしたように、国が世界が占領地域を増やすために、交易の最短ルートを見つけるために船を出発させる。そんな国があってもいいはずだ。
ドフラミンゴは1つの国を支配していたが、その支配領域を増やそうとはしなかった。より豊かになるために、ということを目的として動く敵がいてもよいはずだ。少年漫画なので勧善懲悪が喜ばれるのは理解できるものの、自国民の経済のために、大義名分を作って他の国を蹂躙していくという多面的に見ていい面も悪い面もあるような矛盾を抱える行動をする者がいると、大人の世界を知る1つのヒントになるのではないかと考える。
■海賊のジレンマ
そもそも、海賊という定義がよく分からない。海賊は商船など、一般の人たちを襲って金品を強奪するものだ。麦わらの一味はそれをやらず、海賊を狩る海賊だとしても、もともと盗品を手に入れるわけだから持っていた人に返さないと、少年漫画としては具合が悪い。じゃあそれもやらないとしたら、海底に沈む誰のものか分からない宝を見つけたり、王様から依頼を受けてそれをこなしてお金を貰ったりする、冒険家や雇われ兵士みたいなことに成り代わってしまう。現状は、海賊と言うよりは国にも縛られない、私兵を持つ航海グループと言った方が近いかもしれない。
海賊で、海軍から追われている、という事は分かった。ここで感じてみたいのは、世界政府が国連の様な各国の組織であるという前提に置いて、そのお金の出所があり、それぞれの国で分担金額が違い、権力が違ってくる。その権力を持った国がわがままをして、残りの国の不満が溜まる。また、海軍と言っても、色々な国から兵を出している連合軍だとすると、平和維持のために活動しているにも関わらずわがままを言う国の発言で駆り出されてやってられない。祖国に帰りたい。組織の利害関係の中に、社会のリアルさと面白さが詰まっていると思う。海賊は自由だ。海軍は連合軍で、内ゲバの種を抱えていて海軍大将が悩んでいる。そんなシーンがあってもいい。
海賊もそうだ。乗組員がいる。全員が全員天涯孤独ではない。一定の期間努めて祖国に帰りたい人もいるはずだ。セックスもしたいし結婚もしたいし子供も欲しい。そんな欲望が全く感じられない。ルフィや周りの乗組員に、大人としての欲望や葛藤が見受けられない。少年漫画なのでHなことは必要ないとしても、仲間が離れていく、いなくなる喪失感、それは、エースだけではなくて、身近な仲間がそうなったとしても結構悲しくてよい様な気がする。
今は、ルフィが勝手にやっても、仲間は着いてきてくれる。素晴らしい。しかし、ブッダのダイバダッタのように、仲間でありながらリーダーに不満を持ち、クーデターを仕掛けるやつがいてもいい。ルフィに不満があり別の海賊団を作る人たちがいてもいい。社会に出るという事は組織を調整しながら生きるという事で、それを投影できるものがあると、大人へのヒントが見つけることができるようになる。
と、色々ワンピースに対して理想を語った見たが、リアルを追求しすぎて白い巨塔みたいなドロドロしたものになっても、子供は面白くないのかもしれない。そういう意味では、そういう国家間の戦いやいざこざを盛り込んでいるのはガンダムになり、人生の目的を考えさせるのはエヴァンゲリオン。子供がワンピースを見て優しい思いやりのある子になると思うと、それ以上求めなくてもいい様な気がしてくる。
以上